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長谷部派一門の系譜


(石渡信太郎氏著、信翁刀剣随筆より※その出展は校正古刀名鑑と思われる) (※諸説あり)

初代国重が初代が建武(南北朝初期)を作刀時代として、最後は応永(室町初期)のため南北朝に最も活躍した一族と言えるでしょうか。

下記に各刀工について記載しますが、諸説あります。私が調べた限りです。 各人の作風や銘についてはいずれ別途記載します。

 

▽長谷部国重

 在銘の刀以上の長さのものが見当たりません。  南北朝の刀のため、ほぼ全てすりあげられていると思われます。

 また現存作に短刀、脇差し(寸伸び短刀)が多いことから、短刀が得意だったのではないかという見方があります。  しかし実物を見た実感として、国重、国信については、長い物の方が肌が詰んで皆焼も見事、出来が良い傾向が見受けられます。

 ☆銘について   二字銘は稀です。   銘字はかなり味のある字で、少し傾いて五字に「長谷部国重」と切ります。   また、国の中を玉とする物と王とする物があり、作刀時期等により変わっていると思われます。   作刀年を記している物は散見しますが、在住地を記載した物は(三代を除いて)ありません。

初代

 長谷部派の開祖にして、最も評価が高い方でもあります。  長谷部派の代表作である「へし切長谷部」は初代が作刀したものと言われています。

 後代に行くにつれ出来が悪いとされるため、思うに人に物を教えるのは不得意な方だったかも知れません。

 古今刀剣便覧にて京都 五条猪熊住と記載。

二代

 初代、二代の区別は難しく、ほぼ出来で判断しているようです。

 信翁刀剣随筆に拠ると、

 「旧小田原藩より出たもので~中略~小泉久雄氏在世中の著書「鑑刀随録」に精密なる押形を載せた」

 貞和五年己丑十一月日 と作刀年を彫った長谷部国重があるとのこと。  また、文和二二年と刻んだ脇差しが残っています。

三代

 「本阿彌光遜著:日本刀の掟と特徴」の中から引用すると、

「長谷部国重の三代が、当国天王寺に移住した。作風は姿品位上らず、焼き幅広く沸本位であるが沸少なく湾乱の技上らず、地鉄は荒になり而も肌立つ気味である。到底山城の初二代には及ばない」

 等とさんざんな言われようで、あまり出世した刀鍛冶では無かったようです。  初代、二代と三代はその出来から、明確に区別される傾向があるように思います。

 なお「和佐方以著:剣相秘伝」によれば、

 「天王寺にて打たる時は、摂州住國重と打」

 とあるため、三代國重は銘と共に在住地を記載した可能性があります。  はっきり三代國重と呼ばれる刀を見た事が無いため、情報に追加があれば追記します。

 

▽重信

 信翁刀剣随筆に拠れば長谷部国重の四代と思われる長谷部重信という刀鍛冶が居るとのこと。

 「とある銘鑑には 長谷部……永享、山城 とあり」土屋押形、埋忠押形に脇差しが載っているとのこと。

 重信については典拠は不明ながら国重の父という説、千手院重信のことだという説、二代国重の弟子という説と情報が錯綜しており、詳細不明。

 現存作がどこにあるのかも不明ながら一部の刀剣書に長谷部重信として出てくるので存在はしている可能性もあるようです。

 押形を見る限り、出来は三代国重より良いという噂です。

 

▽国信

 長谷部国重の門人、あるいは兄弟、あるいは子と言われています。

 古今鍛冶備考に拠ると大和千手院の出でよく熱田神宮にて刀を造成したとされ、現在も熱田神宮に短刀が幾つか残っています。熱田国信、唐柏などが代表作です。古今鍛冶備考においては後に国重と名乗ったという記載があります。

 ☆銘について   二字銘は稀です。   銘字はかなり味のある字で、少し傾いて五字に「長谷部国信」と切る物です。

 国信も国重と同じく現存作に短刀、脇差が多く見られます。  代表作に上杉家伝来の「唐柏」(太刀、個人蔵)や、熱田神宮に奉納された「熱田国信」があります。  (熱田国信は、二〇一六年現在、東京国立博物館に寄託されているという話があります)

 私見としては兄弟では無いかと思います。

 国信は国重と比べ、梵字や素剣等の刀身彫刻がある物が多く、かつ出来が良いです。  皆焼は、国重が抑え目、控え目に対し国信は華麗でやや派手な物を焼く印象があります。

 

▽國平

 古今鍛冶備考によれば国重の門人とされます。

 國平について記載している刀剣書をあまり知らないのですが、その中でも「あまり見たことない」「稀」等と記載があり、現存作がかなり少ない物と思われます。  小笠原信夫氏著、「長谷部国重についての一考察」の中に短刀の押形がありますが、 他に資料があれば是非教えてください。

 

▽信行、宗信

 國平に輪を掛けて資料が見つかりません。  資料があれば是非教えてください。お願いします。

以上。

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適宜追記編集します。

参考文献 古今鍛冶備考/小笠原信夫氏著、Museum338号中「長谷部国重についての一考察」/ 辻本直男氏著,図説 刀剣名物帳/本間 順治氏著,相州伝名作集/ 石渡信太郎氏著、信翁刀剣随筆中「長谷部国重とその一門」/ 和佐方以氏著、剣相秘伝/本阿彌光遜著,日本刀の掟と特徴/ 田野邊道宏氏著,日本刀 五ヶ伝の旅 山城伝編

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